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泡沫は海に還す【twst】

第9章 7-1. 咬魚の誘惑 前編


シェラの喜びは自分の喜びで、シェラの幸せは自分の幸せだという気持ちは変わらない。
シェラの幸せを考えたときに、隣にいるのは自分ではないと、シェラへの恋心を自覚したと同時にジェイドは悟ってしまった。
シェラのフロイドに対する言動や態度、そして表情、それら全てがジェイドの考えを裏づけている。
どれだけ悲しくても、どれだけ悔しくても、人の気持ちというものは思い通りにはならない。

(僕が見たいのは、シェラさんの笑顔だ)

本気で困らせ、悲しむ顔は見たくない。
世の中には、知らない方が幸せなこともある。

「……そっか」

言外に滲むジェイドの考えを察したのか、フロイドはそれ以上追及してこなかった。
自由奔放に言いたいことはなんでも言うようなフロイドであるが、必要な場面ではきちんとひとの気持ちを汲み取ることが出来る。

(察しが良くて助かりますね……)

そんなフロイドが兄弟でよかった。
ジェイドはひとつ息をつくと、眉を下げて淡く笑った。

自分の気持ちがシェラへは届かないと悟りながらも、無かったことにすることなど到底出来はしない。
だから、シェラへの気持ちは、稚魚の頃に海底で見つけた宝物のように、そっと大切にしまっておこうと思った。

フロイドだってジェイドと同じで、シェラが笑顔でいられることを望んでいる。

「はい。ですから、決まった運命に抗ってでもフロイドはシェラさんの手を離さないでくださいね」

ならば自分は、フロイドとは違う立場でシェラの笑顔を守り、見守っていこうと、ジェイドは密かに心に思った。


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