第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編
「事情は分かりました。故意ではないとはいえ、他寮の生徒に怪我をさせたことに変わりありません。シェラさんのことですから事故だから気にするなと言いそうですが、それに甘えず誠心誠意謝罪をするのですよ」
「はい……」
反省した様子で、しゅん、と肩を落とす年。
そんな彼と肩を組むように、フロイドは楽しげな笑顔を浮かべながらアズールに訊いた。
「ねーねーアズールぅ。オレさぁ小エビちゃんの様子見に行こうと思ってんだけどさぁ、陸のお見舞いってメロンとか持ってくんだよね?ラウンジの持って行っていーい?」
フロイドの見ていないところで、寮生は『え?』という顔をした。
お見舞いにはメロンを持っていくという文化は間違っていないが、それは入院した人へ対してではないのか。
なんて思ったが、せっかく上々なフロイドの機嫌を損ねるのが怖い1年は黙っておく。
「いいでしょう。きちんとラッピングをして持っていくように。あと、オクタヴィネルから、というのも忘れずに」
アズールもアズールで、お見舞いのメロンに対してなにも突っ込まない。
寮生は戸惑ったが、わざわざ口を挟むのも損な気がした。
わざわざ自分で自分の立場を悪くする必要も無いだろう。
それに、自分が突っ込まなくてもシェラが突っ込んでくれるだろう、と考える。
「りょおかーい!」
善は急げと言わんばかりに、フロイドはモストロ・ラウンジにメロンを取りに行こうと、鏡舎へ向かって走り出した。
ジェイドには怒られたが、とりあえずフロイドに絞められずに済んだと、1年はこっそりと胸を撫で下ろした。
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