第6章 5. 人魚の純情
はたき落とすように、フロイドは言葉を重ねる。
ジェイドが何を言おうとしたかなんて、フロイド自身が1番理解している。
頭の中では理解している。
この恋の行き着く先は、地獄であることに。
シェラはこの世界の人間ではない。
いずれ元の世界に帰って、いなくなる人である。
番になって欲しいだなんて、甘美な夢。雲を掴むような、淡すぎる希望。
もし、シェラと結ばれたとしても、待っている結末は別れである。
「だけどさぁ……好きになっちゃったんだもん。仕方ないじゃん」
ひとたび恋に気づいてしまえば、想いは募るばかり。加速するばかり。
頭の中では理解していても、理性が制止をかけようとも、本能には抗えない。
心は、そんなに単純ではない。
シェラの心が、欲しい。
刹那の恋になることは明白。
しかし、黒真珠のような彼女に魅せられたフロイドは、自ら刹那の恋に身を焦がす悪党になることを選んだ。
シェラが自らの意思でフロイドと一緒に過ごす未来を選ぶという、一縷の望みに賭けて。
.。o○