第4章 アネモネ *尾浜勘右衛門*
「兵助…また和歌菜に豆腐料理振舞ったのか?」
「あ、勘右衛門!そうなんだ、和歌菜はすっごく美味しそうに俺の豆腐料理を食べてくれるし、なんならさらに美味しく食べれるアレンジを一緒に考えてくれるし!」
今日も今日とて食堂の厨房を借りて豆腐料理を作っている兵助をからかってやりに来た。だが、兵助はいつも彼女に豆腐料理を振舞うたびに楽しそうに彼女の事を話している。
兵助は彼女と初めて会った日から一目惚れだったようで、男として彼女が振舞っていても関係なかったみたいで女だと分かってからは、暗殺者という線引きは最低限で彼女と親しくなろうとしていた。
俺は、一応6年に倣って彼女の事はいい子だとは思って居たが暗殺者として警戒をしていた。
「まぁでも、最近和歌菜のおかげかお前から豆腐の相談を受けなくてよくなったのはありがたいけどな」
「なんだよ勘右衛門!その言い方!!」
「へへーん…あ、和歌菜」
「えっ!?」
調理場にいる兵助と話していると、食堂の外に彼女の姿を見たからそう言うと、兵助は突然慌てて外を見る。
外にいる彼女は、同じクラスの滝夜叉丸と喜八郎と一緒に庭を歩いていた。どうやら午後の授業は実技のようだった。
「あの3人…というか、4年生は彼女が正式に編入してから仲が良くなったように感じるよな。きっとバランスがいいんだろうな」
「…あぁ」
おいおい、後輩に嫉妬心剥き出しじゃねえか・・・
特に4年の綾部喜八郎は、兵助と同じように彼女が男装していた頃から彼女に好意を持っている様子だったから余計に兵助も警戒しているのだろう。
まぁ、俺達5年生は兵助のそんな姿を見るのが面白いんだけどな