第9章 オミナエシ *竹谷八左ヱ門*
「ぷっ!アハハハ!!」
俺は思わず、腹を抱えて笑った。
それにつられるように生物委員会の下級生達も笑う始めた。
彼女は三治郎の肩を持ち、三治郎の身体を揺すりながら『笑うなー!』と騒ぎだす。
「あぁ、すまない!お前の意外な一面を見たような気がしてな。」
ようやく落ち着いた俺は、目から出た涙をぬぐいながら彼女を見た。だが、彼女は俺を睨んだままゆっくりと近づいてきて俺にコソっと耳打ちした。
『…竹谷さん、あんまり上級生には言わないでくださいね。』
自分の弱点をこんな形で晒してしまったことで、顔をほんのり赤くしながらそんなことを言う。確かにこの情報はかなり有力だがこんなに嫌がるのならと・・・
「…お前が下手なことをしなければ言わないようにする。」
『…じゃあ上手にやりますよ』
と、二ヒヒッと歯を見せて笑った。
ドキ…と、心臓が大きな音を立ててなったような気がした。
その音の意味が分からなかった俺は、その後も後輩達と彼女に動物たちの紹介をしながらエサやりや小屋の掃除を手伝って貰った。
***
『よかったね、無事に生まれて』
「はい!全部で6羽。みんな健康です!」
数日経った時、彼女にはうさぎの出産にも立ち会ってもらった。後輩達と共に生まれたばかりのウサギを見て笑っている彼女に、なぜだか俺は目が離せなかった。
「先輩?」
「あっ…悪ぃ。どうした?」
「いえ、最近竹谷先輩若月先輩に対してきつくなくなったなと思いまして…」
「えっ…俺、そんなにキツかった?」
「少なくとも、ずっと睨んでいるように見えました。」
3年の孫平にそんなことを言われて、俺は頬を掻いた。
確かに最初は彼女の事を警戒していたし、暗殺者として信用してなかったけど・・・
おそらくこの頃からだろう・・・
俺が、彼女を好きになったのは・・・