第9章 オミナエシ *竹谷八左ヱ門*
彼女の最初の印象は、正直よくなかった。
初めて彼・・・いや、彼女にあったのはタカ丸さんが彼女に学園内を案内していて生物小屋にやってきたときだった。
俺達は、いつも通り忍術学園で飼育している生き物たちの世話をしていた。
「竹谷君、彼女は4年生に編入してきた…」
『由利若月です、よろしくお願いします。』
「おぉ、5年ろ組の生物委員会委員長代理の竹谷八左ヱ門だ。よろしく。」
『はい、よろしくお願いし…』
彼女は丁寧に頭を下げて挨拶をするが、何かを見て言葉を詰まらせた。すると俺の後ろから下級生達が走ってやってきたのだ。
「あ!編入してきた人ですね!乱太郎達から話聞いてます。1年は組の佐武虎若です!」
「同じくは組の夢前三治郎です!!」
「1年い組の上ノ島一平です。」
「い…1年ろ組…、初島孫次郎…です。」
「どうも初めまして、3年い組の伊賀崎孫平です。こっちは僕のペットのジュンコと言います。」
下級生達はみんなそれぞれ飼っていた動物たちを世話していた最中のようでみんな手に動物やら虫やらを持ったまま彼女の前に駆け寄ってきたのだ。
でも彼女は、さっきまで丁寧な立ち振る舞いをしていたが、明らかに動揺しているようで後退りをし始めた。
その反応で明らかに動物が嫌いなのだと判断ができた。
孫平が連れている蛇やカエルを嫌がるのは分かるが、一平や孫次郎が抱えているタヌキやウサギを見ても嫌がっていたからだ。
「…じゃあ、僕達行くね。行こう若月。」
と、その空気を察したようで俺と彼女を交互に見たタカ丸さんが彼女を連れて去っていった。
1年生達は、何か彼女の勘に触ったのではないかと不安がっていたから俺は最初の彼女の印象はいいものではなかった。