第1章 設定
むかしむかし、富士山の麓の里に1人の大名と奥方がいました。
夫婦は中々子宝に恵まれず、毎日観音様に子宝成就のお祈りをしておりました。
そしてある日、奥方はとてもとても可愛らしい姫君を授かり、姫は花世の姫と名付けられました。
夫婦に可愛がられて育った花世の姫は美しく成長をしましたが、奥方が病で亡くなってしまいます。
父は再婚をし、花世の姫には継母が出来ました。
しかし継母は花世の姫の美しさを妬み、姫が山姥に食べられてしまえばいいと思いました。
夫が留守の間に、姫を姥ヶ峰の奥の谷に捨ててしまったのです。
ところが山姥は外見は恐ろしくても、とても優しい人でありました。
鬼に食べられそうになった姫を救い、姥衣と小さな巾着を渡してこう言いました。
「鬼や獣が近付かないように、山姥の姥衣を纏いなさい。これを着ていれば誰もそなたを姫とは思わないだろう。この巾着は夫となる男性に巡り会う時まで、絶対に開けてはいけないよ。」
山姥にお礼を告げ、人里に出た花世の姫は中納言の大きなお屋敷で雇ってもらえることになりました。
ある日、姥衣を脱いだところを中納言の息子に見つかってしまいます。
花世の姫の美しい姿を見た中納言の息子は、姫に一目惚れをし、求婚しました。
しかし、嫁入り道具などは何一つ持っていない花世の姫は困ってしまいました。
そこで、山姥に貰った小さな巾着のことを思い出し、開けてみました。
するとどうしたことでしょう。中からは綺麗な衣装や調度品、守刀の脇差に金銀財宝が出てきたではありませんか。
そのおかげで、花世の姫は皆から祝福され中納言の息子と結婚し、生涯幸せに暮らしましたとさ。
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昔話「花世の姫」を元にオリジナル要素を脚色しております。