第5章 VS白鳥沢
「ツッキーと影山くんが力を合わせてる」
「ほんとに!でも何か言い争ってるよね?」
「ぶつかってこないでよ、とか言うてるんちゃう?」
モノマネしながら言うと、やっちゃんが
「そっくり!」
と笑う
「あとで勝って終わったら、本人に言うたるわ」
勝つって言葉に出さんと弱気に負けそうになる
「蛍がイジられてる!」
お兄さんが驚き、みんなで笑う
みんな無理に明るく振る舞ってるように見える
やっと取り返した烏野のセットポイント
影山くんのトスが翔陽に上がる
合わない
翔陽は咄嗟に左手でボールを押し込み、第4セットを何とか死守した
もう影山くん限界なんやろな…
泣いても笑っても最後のファイナルセット
ベンチに集まるみんなに視線を落とす
「あれ?スターティング菅原さんなのかな?」
やっちゃんが訊く
「みたいやな」
でもスガさんは両手を抱えるようにして立ちすくんでいる
無理もない
ファイナルセットで登場する緊張や不安、責任、重圧
全てがその両手にのしかかる
そこに潔子さんが近づいていき、スガさんの両手をキュッと包む
チクリ
その光景を見て胸に少しの痛みを感じる
でも
ハッキリと気付いた
スガさんはきっと私がおらんくても大丈夫
私がスガさんの気持ちを受け入れなくても、何年か経ったらスガさんにお似合いの可愛らしくて優しい彼女が出来るやろう
私がおらんとあかんのは…
ピーッと笛が吹かれファイナルセットが始まる
「5セット目は15点なんですよね」
「そう、だからあっという間に終わるから離されずに行きたいよな」
やっちゃんとお兄さんが話す
「菅原は堅実なセッターだからな、大崩れはないと信じたい」
滝ノ上さんが言う
立ち上がりから気迫が立ち込める
相手コートからのボール
スガさんがレシーブ
セッターがファーストタッチ…
と思った時
ノヤさんのトスアップからの
全員シンクロ攻撃!
それをスガさんが決める
そういや合宿ん時
スガさんも練習してた
打つ方
「っしゃぁぁぁ!!」
やっちゃんとハイタッチする
「大崩れしなきゃいいって話じゃなかったな」
「俺らの頭が守りに入ってたな」
お兄さん達が呟く
「そうですよ、最近のスガさんは堅実なだけじゃないですから」