第5章 VS白鳥沢
ー研磨side
「翔陽たち、決勝進出だって」
「へー、やるなぁ」
「で、今日ウシワカとやんのか、可哀想〜ってか…俺、歩ちゃんから何の連絡もないんですけど〜」
拗ねるクロを見て少し優越感に浸る
翔陽からメールで決勝進出の連絡がきたのは事実だけど、その後歩から電話がかかってきたのはみんなには内緒
ー昨日
「もしもし、歩?聞いたよ、決勝」
『え、もしかして翔陽?うわー!先越されたー!』
「はは、おめでとう」
『ありがとう、そっちはまだでしたっけ?』
「うん、2週間後かな」
『それって梟谷と当たったりすることってあるんですか?』
「んーかなり進んでいかないと当たんないけど、準決勝で当たるかな」
『なにそれ、見たすぎるんですけど』
「でも準決勝まで勝ち進まないと…」
『全国行くんやから、進むでしょ』
「そう…だね、じゃあ観に来れば?」
『観に来ればって…そんな簡単に…』
「でも…本当に準決勝まで残って、梟谷と戦うことになったら、歩には、見にきて欲しいって思うよ」
『研磨さん…』
「だって歩は、音駒のマネージャーでしょ?」
少し間があって歩は
『分かった、どないしても行く』
そう言ってくれた
最初は興味本位だった
急に音駒のマネージャーやるとか言い出したり
クロにちょっかい出されたりして
何となく面白そうな子だと思った
きっかけはゲームだったけど、短期間で頻繁に電話するようになって、知れば知るほど
面白い子だった
女の子に対してこんな気持ちになったのは初めてかも
クロが言う通り、いいなって思っても知っていくうちに冷めてしまって、なんか変な感じになるっていうのがいつものパターン
でも歩は違う
おれはもし歩を手に入れたら
満足して、興味がなくなるんだろうか
それとも飛んで仲間の所に帰れないように
翼をもいで鳥籠に閉じ込めるのだろうか
そして…
飛べないのは可哀想だと泣くのだろうか
自分が心の底から女の子を好きになったことがないから
怖くてこの先を知ることができない
『音駒が決勝進出したら連絡してくださいね』
「うん…わかった」