第4章 代表決定戦
アウトに見えたボールはクンッと曲がって青城コートに入る
「いよっしゃぁぁ!!」
やっちゃんと手を取り合い、ブンブン振り回す
「歩ちゃんっ、腕もげるっ」
「あ、ごめんごめん!山口くーん!もういっぽーん!!」
次のボールもサービスエース
「うわぁぁぁぁ!!!」
興奮した冴子さんが、私たちの頭をぐしゃぐしゃにする
全員でガッツポーズ
3本目はオーバーで拾われる
「ぁあっ!」
山口くんの顔面レシーブでボールは繋がる
いけっ!いけっ!
「いけーーー!ツッキィィィーーー!」
ツッキーのスパイクは左端に飛ぶ及川さんの指に
ひっかけてブロックアウト
「うまい!ひっかけた!」
滝ノ上さんが言う
「ツッキィィィィ!!!」
私も大声で叫ぶ
ツッキーが山口くんにボールを渡す
まだサーブ権は渡さない
もう一本山口くんにサーブを打たせる
きっとその気持ちがさっきのブロックアウトやった
合宿の時にツッキーに掴みかかった山口くんの姿を思い出す
涙が溢れる
「山口くん…よかった…」
ボロボロと涙を流す私を見て、冴子さんがギョっとする
「歩、情緒!」
「だって…」
「まだ何も終わってないんだから、しっかり目に焼き付けて見てやんなよ」
「はいっ」
私は涙をジャージの袖で拭い、しっかりと目を見開く
しっかり焼き付けよう
二度と戻らない今日という日を
大好きなみんなの姿を…
まだ山口くんのターン
サーブが放たれる
「ネッットイーーン!これで同点っ!」
烏野応援団が盛り上がる
「あと2点!あと2点で青城に勝てる!」
でも相手は宿敵
そううまくはいかない
デュースになりそこから取って取られて…
「くっそ、マッチポイントまでいったのに!」
「ここで…あの腕もげサーブの人だよ…」
さっき山口くんのターンでサーブだけで何点も取った
でも今度及川さんにそのサーブ権がうつった途端
サーブが恐ろしいもののように映る
私たちは祈るように両手を合わせる
祈りは届かない
「フルセットか…」
コート内のみんなは限界を超えて頑張ってる
何も出来ない自分に苛立つ
仲間やのに祈ることしかできひんなんて
3セット目
泣いても笑ってもこれが最後
両者一歩も引かない