第3章 春高予選
ー菅原side
初めて見た時からいいなって思ってた
見た目はもちろん好みなのもあるけど
一緒にいると本当に楽しくて明るくて‥でも
コートに送る視線はいつも真剣で
コートにいない俺には分かってる
その視線の先に見つめるのが俺じゃないってこと
元々がコミュ力の塊だから、合宿に行けば他校の選手にもちょっかい出されるし、本当にヒヤヒヤする
付き合いがいいから今日だって断られなかったけど
俺を意識してるわけではないんだろうな
浴衣の衝撃が凄すぎてマジで直視出来なかった
誰にも見せたくない
母さんに彼女って言われた
そうだったらどんなに嬉しいか
歩ちゃんは俺のこと男として見てる?
烏野のお母さんじゃなくて
部活の先輩じゃなくて
1人の男として
女の子に、しかも好きな子に着付けしてもらうなんてもちろん初めてで、心臓がバクバクうるさかった
心臓だけならまだしも、別の部分が反応してしまわないように関係ないことを考え続けた
「はい、出来ました」
彼女が言ったから、振り返ると何故かずっと左を見てる
「何?」
「いや…眩しすぎて直視できません」
よく見ると、歩ちゃんの頬が赤く染まっている
それは…男として意識してもらってる
そういうことでいいかな?
会場に着くと、浴衣姿の人が沢山いる
友達同士、家族連れ、カップル…
「ねぇ見て、あのカップル、男の人の方も浴衣着てる。カッコいいね!」
「彼女も美人だったね」
すれ違う人の声がする
カップルに見えているのが凄く嬉しかった
「夕方なのに結構アツイですね」
彼女が浴衣の胸元をパタパタとさせる
見慣れているはずの彼女が、いつもと違う場所でいつもと違う装いでいつもと違う仕草をするだけで、こうも戸惑うもんなの?
「何か飲み物買いに行こうか」
「いいですね!」
2人で飲み物を買いに向かおうとするけど、人混みでスムーズに前に進めない
「結構混んでるね、はい」
俺は振り返って左手を彼女に差し出す
歩ちゃんは照れ臭そうにしながら、右手を俺の左手に重ねる
自然だったかな?
手汗大丈夫かな?
「知ってました?」
急に後ろから歩ちゃんが話しかけてくる