第3章 春高予選
「おつかれ、歩ちゃん」
「あ、スガさんお疲れ様です!みんないい感じですね!山口くんのジャンフロすごい、アレ敵やったらめっちゃ嫌ですね」
「ほんと、今年の1年は頼もしすぎるほど頼もしいよ。歩ちゃんも含めてね」
「いやいや、私なんて何も。本当にすごいのは3年生ですよ。みんな、包容力あって大人やし…私らあと2年経ってもこんな風になれませんよ」
「試合…出れなくても?」
「…スガさん、諦めてないですよね?影山くんがいても、出ますよね?私にはそう見えますけど」
「…ふふ…歩ちゃん、1つお願い」
「なんなりと!」
「来週、仙台で祭りがあるんだよね。一緒にいかない?」
「9月半ばやのに、そんなんあるんですね!いいですよ!誰誘いますか?」
「誰も」
「え?」
「2人で」
スガさんと2人でお祭り?
それってデート?
いや自意識過剰?
「いいですよ」
「本当?出来たら浴衣着てきてよ」
「あ、はい。私実は自分で着付け出来るんですよ」
「え、じゃあ俺も着せて貰おうかな?」
「スガさん浴衣あるんですか?!」
「うん、あるよ。ただ自分では着られないから、どうしようかと思ってたんだよね。この歳で母親に着せてもらうのも恥ずかしいしね。だから歩ちゃんが着せてくれるなら」
「毎年近所の兄弟着せてたし大丈夫です!」
あれ?
なんか安請け合いしたけど…
年頃の女子が年頃の男子の着付けすんのってどうなん?
「じゃあ土曜練習終わってから、一回帰って俺んち集合でいい?」
「はい」
とは言ったものの…
ツッキーのことも中途半端で
返事はまだしないでって言われたから
付き合ってるわけでもないし
影山くんのことも目で追ってしまうけど
吹っ切るって決めたし
でもなんか…こんなことしてていいんかな
っていう罪悪感
でもその罪悪感とスガさんは何の関係もないし
…行くって返事したからには行こう
とりあえず土曜までに目瞑って他人着付ける練習しよう
ーあっという間に土曜が来てしまう
こういう時の練習って何で早く終わるんやろ
「じゃ、後でね」
後ろから追い越し様にスガさんに言われる
「あ、はい」
チラッと後ろを振り向く
怪訝な顔をしたツッキーと目が合う
気にせず歩き出した