第11章 終わりと始まり
でも…
長いラリーの末に放たれた東峰さんのスパイクはドシャットされる
「スマンッ」
東峰さんは天を仰ぐ
昼神さん…機械のようにただ淡々と目の前の情報を掴み取ってリードブロックに跳んでくる
さっきからもう東峰さんはこの人に何本止められてるんやろ…
『烏野の心を挫く鴎台のブロック炸裂ー!』
たまらずコーチはタイムアウトを取る
私とやっちゃんは東峰さんに掛ける言葉も見つからず、ただただドリンクとタオルを配って成行を見守るしか出来ない
すると大地さんが東峰さんに近づき
「オォイ!"世界の終わり顔"やめろォ、100本中100本決められる選手なんていねぇ」
と言う
それに続いてスガさんも、東峰さんの方に歩きながら話し出す
「そりゃあ旭がいきなし超人になって、3枚ブロック相手にどんなクソトスでもどっかんどっかん決め出したら最高だよ?他のスパイカー要らねぇわ
でもそんなの木兎でもウシワカでもあり得無ぇべ
調子乗って凹んでんじゃねぇーー!!」
と急に物凄い形相で東峰さんの背中をビターンッ!と叩く
えええ…
励ますのかと思いきや、2人の中々のスパルタぶりに一同唖然とする
でも
東峰さんはフッと肩の力が抜けたように笑って
「逃げる前…試合でブロックされる度、ミスる度"自分はなんてダメなんだ"って思ってた、ご丁寧にも失点の都度な
"自分はなんてダメなんだタイム"が無駄だってわかっても、頭が勝手にソッチ行っちゃうんだよなぁ
危なかった、ありがとな」
と大地さん、スガさんに応える
ああ
これが3年間仲間だった人の空気感
自分よりも自分のことを分かってくれる仲間の絆
3年生の強さの根底を垣間見た気がして、胸に込み上げてくるものがある
本当に3年生は偉大で、あと2年であんな風になれる気がしないと毎度思い知らされる
東峰さんはきっと誰よりも真面目で優しくて、仲間のことを信頼して大事にしてる
そんな東峰さんやからこそ、自分自身の強さをもっと信じてあげてほしい
「フーッ」
大きく深呼吸をしてコートに戻る東峰さんの後ろを、祈るようにしてやっちゃんと見送った