第10章 ゴミ捨て場の決戦!
歩side
腰が抜けたみたいにヨロヨロとその場に座り込む
本当に心底自分が嫌になる
ツッキーや黒尾さんの言う通り、隙だらけで脇が甘くて、こういう態度がツッキーを傷つけてるって分かってるのに…
私は両手で顔を覆って天を仰いだ
せっかく普通に話せるようになったのに
今朝の会話を思い出す
「今日の音駒との試合…日向ほどじゃないけど僕にとっても特別なんだと思う」
「黒尾さんと初めて公式戦で戦うんやもんな」
ツッキーは私の手を握る
「だから、昨日の…やって」
「え?」
「歩の力、全部ちょうだい」
ツッキーは私の手を握ったまま引き寄せると、耳元で囁いた
全部ちょうだいなんて言われたら、それが力のことって分かってても恥ずかしくて顔面から火が出そうになる
「分かった!分かったから!もう心臓に悪いから急に…」
「なに?…昨日はあんなに積極的だったのに」
意地悪くツッキーが笑う
「なっ…それ言い出したら昨日までのツッキーの態度ほんま何やったん?!」
いつものように軽口を言い合ってると、音駒のみんなが私たちを揶揄いながら通り過ぎていった
それに続いて体育館に入ろうとするツッキーのジャージの裾を摘んで
「待って」
って引き留めた
「まだ…その…力を分け与える儀式的なものやってませんけど…」
モゴモゴと言うと、ツッキーは満足そうな顔をしながら両手を差し出してきた
「じゃあ…よろしく」
改めて考えると恥ずかしすぎるけど、自分から言った手前仕方ない
意を決してツッキーのおっきな手に指を絡めて、ギュウっと力を入れた
「…力つよすぎ」
「私の力全部ってゆーからやん」
「これさ…周りから見たら何やってんのって感じだよね」
恋人同士のように手を握りあっていると言うよりは、若干レスリングの組み手のように両手を絡ませている感じの自分達に笑いが込み上げてきて、2人で顔を見合わせて爆笑した
「確かに!ハハハハ」
そう言いながらもしっかりと握り合った指から伝わる体温は、私を幸せな気持ちにさせた
私が好きなのはツッキーだけやのに
何でいっつもすれ違って傷つけてしまうんやろう
あんな顔させるぐらいなら
ツッキーの心を乱してバレーの邪魔をするだけの存在なら
私なんていらないよね