第3章 春高予選
黙ってると
「それにその後、向こうのキャプテンに連絡先聞いたりして…デートがどうとか…俺らは必死に練習しに遠征に行ってた」
「…ごめん」
「中途半端な気持ちなら、うちのバレー部にはいらない。及川さんの連絡先でも聞いて帰れば?」
「…」
影山くんは背を向け歩き出す
足が鉛のように重たくて前に進めない
それからどのくらい経ったか
しばらくその場にボーッと突っ立ってた
「ねぇ、キミだれ?」
振り返ると一人の男子生徒が立っている
さっき練習試合してた中にいたような気もする
多分バレー部の生徒
「あ、ごめんなさい」
慌てて逃げようとすると、パッと手を掴まれた
「待って
え、なんで
泣いてんの?」
「あ、ほんとごめんなさい」
「ちょっと落ち着きなって、別に何もしないから」
「はい、ありがとうございます」
涙が止まらなくて、その人に手を掴まれたままひとしきり泣いた
「…他校の生徒でしょ?」
「はい…すみません」
「何があったか知んないけど、泣き止んでよ」
そう言って首にかけていたスポーツタオルで顔をグシャグシャと拭かれた
「汗臭かったらごめん」
「…大丈夫です」
私は彼の手からスポーツタオルを受け取り、残りの涙を拭った
「ありが…
「わーーーー!国見チャンが女の子泣かしてるーーー!」
大騒ぎで近づいてくるのは…大王様?!
その後ろからも3.4人の人が近づいてくる
「違います」
私にスポーツタオルを貸してくれた人は国見と呼ばれている
「もう帰んなよ、ややこしいから」
耳元で国見くんが言う
「いえ、面が割れた以上出頭します」
「何の話」
「私、烏野高校のバレー部マネージャー、橘 歩です」
「烏野?!」
全員が驚いた顔をする
大王様が私に近づいてきて
「へぇー烏野って聞いたからには、帰してあげられないねぇ」
意地悪く微笑む
「てか烏野のマネに君みたいな子いたかな?君みたいな子一度見たら忘れないはずなんだけどな。眼鏡美女しか記憶にないし」
「6月に転校してきたんで」
「そ、じゃあ立ち話も何だし」
大王様はそう言って体育館前のコンクリートの階段の所まで私を連れて行き、みんなで輪になって座った