第9章 春高!
先にガタが来たのは飛雄くん
セットしようとしたボールは指に引っかかって、コートに向かって落ち始める
それを翔陽くんはまさかの足技でコッチのコートに返してきよった
『ー足ッ!日向翔陽恐るべきバランスとセンスっ!烏野かろうじて稲荷崎のブレイクポイントを防いだー!』
なんじゃありゃ…
あんなんありか…と思いながらネットの向こうに目をやると飛雄くんが
「文句を言えよ」
と凄むけど翔陽くんは
「文句?なんで?
次もくれ」
満面の笑みで応える
次もくれ…か
低かろうが短かろうがネットに近かろうが、セッターが全力であげたものなら全部
感動したで翔陽くん
歩が烏野に行ったのも何かの縁やな
こんなオモロいチームメイト引っ提げてくるとは…
さぁ、俺のサーブのターン
これで宴も終わりや
静寂に包まれる体育館
俺の放ったジャンフロは向こうのキャプテンの指先を弾いてコート外へ
『高校生とは思えないハイレベルなサーブの応酬!!』
サービスエースにワァァァと沸き立つ会場
「フゥーーーーー!」
最高の気分や
あと一点
次のジャンプサーブはキャプテンが上げよった
でも乱れてるし…長いし…
と思ったけど翔陽くんはもう空中におる
まじか、容赦なしやな
『中央から日向翔陽ー!ネットを越えかけた球を見事上げてみせた影山飛雄ー!』
「ハッ」
思わず笑いを溢すと
「何なん」
怪訝な表情で治が言う
「アイツはセッターを信じとるんやない、ただ思っている
上がってくると思っている
お前はあげるやろ?って」
同情すんで飛雄くん
えらいおっかない相棒持ってもうたな
「それのなにが変なん」
平然と治がのたまう
「どいつもこいつももっと他人を慮れ!」
「…?オモロないで、人でなしがなにゆうとるん」
「ボケたわけやないわっ!」
あぁ…なんか今唐突に思た
俺は…自分の気持ちばっかで勝手に1人で不安になって、歩が俺を好きでいてくれるって信じることがでけんかったんやろ
1回でいい…ちゃんと話したい
勝って、話したい