第9章 春高!
その後、角名さんのサーブ
侑のような派手さはないけど確実に嫌なタイミングで嫌なとこに放り込んでくるのはさすがとしか言いようがない
烏野は返すのがやっとで、稲荷崎のチャンスボール
角名さんがレシーブしようとしたボールを侑がそのままファーストタッチで完璧にアランくんにセットして、アランくんもまたそれを咄嗟にスパイクする
華やかなプレーにワァァァァと会場が沸き、一気に稲荷崎の空気が出来上がる
でも
びっくりドッキリプレーは何も稲荷崎の専売特許と違う
い つ も ど お り
影山くんから速いセットアップ
横幅目一杯に走った翔陽が変人速攻をお見舞いする
一瞬会場内に静寂が訪れ
『日向翔陽走り込んで決めたー!これははやいー!烏野1年生コンビ必殺のブロード炸裂ー!』
と実況を皮切りに会場内がざわつく
稲荷崎応援サイドも、烏野を警戒すべき対象と見たのか
次の影山くんのサーブ
さっきまでブーイングしてたのに、影山くんやツッキーにはあんまり効いてないって気付いたようで
早々にブーイングから方法を切り替える
ドンッドンッドンッ
体育館に響き渡る大太鼓
陸上競技とかで見る選手がオーディエンスに向かって手拍子を求めるアレ
でも選手が求めてやるのと、勝手にリズムを作られるのは違う
笛吹かれてから8秒
自分のタイミングで出せるはずのボールが、だんだん速くなる太鼓にリズムを狂わされる
ドンドンドンドン…
「うわぁ厄介やな…」
みんなどうしても意識してしまい、サーブのプレーだけで結構点差が開いた
と、大太鼓の節とはまた違う重厚な打楽器や木管楽器の音がする
「もしかして!田中さんのお姉さん!」
やっちゃんが言う
「そういや和太鼓やってるって言うてたっけ?カッコいい〜」
稲荷崎一色で塗りつぶされそうになっていた会場を、烏野の空気に変えてくれる救世主
その後リズムを取り戻した烏野は点差を離されないように何とか食らいついていく
もしかしたらいけるかもしれん
対等に戦えてるって思いかけたその時
侑のサーブ
サーブトスまでのルーティン
4歩
…ジャンフロがくる