第9章 春高!
ー歩side
「つーかさっきよ、ミヤアツムのうちわ持ってる女子見たぜ!アイドルかよ!」
スガさんが言うとコーチが
「実際アイドル的なんだよ、王者イタチヤマとはまた別の人気を集め、確かな実力と魅せるプレー、両方を持ち合わせた最強の挑戦者」
と答える
確かに宮ツインズの人気は凄まじい
それを身に沁みて一番知ってんのは私
「会場の誰も俺たちなんて眼中にない…
ふふ…燃える!」
珍しく大地さんがメラメラと闘志を溢れさせてる
扉を開けてアリーナに入ると、耳をつんざくブラスバンドの爆音
「地味に嫌なのが稲荷崎のこの応援なんだよな…」
コーチが呟くと武田先生が、私の方を向いて
「稲荷崎は吹奏楽も強い学校でしたっけ?」
と訊いてくる
「はい、毎回コンクール総なめのゴリゴリ体育会系です」
「キャーーーーッ!!」
私たちの話し声を掻き消すような歓声
アラン君や宮兄弟の名前を呼ぶ黄色い声援
それらを背負って、コートの逆側の入り口から稲荷崎のメンバーが入ってきた
先頭は北さん
まさか半年前には想像もしてなかった
同じ体育館で練習して傍にいた稲荷崎のメンバーが、ネットを挟んでこちらに向かってくるなんて
ウォーミングアップが終わり、私とやっちゃんはボールを片付けるとコートから出てギャラリーに移る
「あっつ」
「歩ちゃんが?!」
私はジャージを脱ぎ捨てて半袖になる
1月やっていうのに体育館の中はすごい熱気で、それに気持ちが昂ってるからか汗が止まらん
ピーッと笛が吹かれ、試合が始まる
まずは侑のサーブから
ブラスバンドの爆音が鳴り響く体育館
サーブを打つためにコート外に出た侑が手を振り上げ、キュッと拳を握りしめた瞬間、一斉に応援と喧騒が消し飛び、シーンと静寂が訪れる
サーブトスを上げる侑
そこに突然、甲高い女の子の声が侑のサーブに合わせるように
「そぉぉぉおーれっっ!!」
っと掛け声をかける
あちゃー…
それ、テレビとかでよく見るけど侑にはやらん方がいいやつ
それでも侑の放ったサーブは烏野コートに突き刺さり、いきなりのサービスエース
会場が歓声に沸く中、侑は凄い形相で声をかけた女の子たちを睨みつける
その表情を見てゾクッとした