第9章 春高!
「え?」
「歩ちゃんの好きな人はどんな人?」
「えええ…田中さんと真逆です。無気力で表情変化に乏しくて、意地悪なことばっかり言ってくるけど…」
「けど?」
「本当は負けず嫌いで心の中はアツくて、たまに優しくて…」
「好きなんだね」
そう言われてコクッと頷く
「私叶歌さんに言われてハッとしたんです。向こうが私をどう思ってても、私が好きやって思うこの気持ちは私だけのものだから…絶対諦めたりしません」
「うん、恋する乙女は強いんだって見せてあげよう!寒いのに引き留めてごめんね。歩ちゃん、私全部勝つから!」
そう言って立ち上がった叶歌さんが手を振ってホテルの方に歩いて行く
私も立ち上がって宿のある方に向かった
玄関に入ると田中さんが立っていて
「橘遅ぇぞ、何してたんだこんな寒いのに」
柱にもたれかかりながら言う
「田中さん、何で?先に戻ったんじゃなかったんですか?」
「いやっ、このクソ寒い中お前が中々戻ってこねーし、俺もなんつーか焦って言いすぎたかなと思って」
「ッハ」
「んだよ」
「それで心配して、待っててくれたんですか?田中さんほんま優しいですね」
「なっ」
褒められ慣れてないのか田中さんは顔を赤くしながら、坊主頭をポリポリと掻く
「ほんまいい男ですね、田中さんがモテんのよく分かるわ」
本人に聞こえないようにボソっと言う
「あ?なんか言ったか?」
「いいえ、てかミーティング!早く戻らないと!」
私は田中さんを階段に向かって押し上げる
「ちょ、コラ!待っててやったのになんて態度だ!」
田中さんと一緒にみんなのいる部屋に戻ると、モニターには稲荷崎の試合風景が映し出されていた
部屋に入って来た私たちを見た烏養コーチが話し始める
「よし、全員揃ったな
じゃあ明日の話だ、もうな今更現実は変わんねぇから言うけど、相手はIH準優勝チーム、兵庫県代表の稲荷崎高校…まぁあのアレだ優勝候補ってやつだ。そんで橘の古巣」
烏養コーチと目が合う
「で、厄介なのは全スパイカーを絶妙に使い分けるセッター、宮侑」