第6章 日常
途中でもう気づいてたんかもしれん
あの人が言うてたこと嘘やないんかもしれんって
「…歩、俺は」
「…最後に一個だけ答えて」
「最後って何や、俺はお前と別れへ…
「…侑は、一回も私を裏切ってないって誓える?」
顔を上げる
視界の中の侑が涙で歪む
「歩ごめん、ほんまにごめん」
抱き寄せようと伸ばされる腕を払い除け、そのまま侑の部屋を飛び出した
家に帰って三日三晩泣き続けた
腹が立って腹が立って気が狂いそうやった
あんな意地の悪い女を浮気相手に選んだ侑も
あんな奴をずっとずっと好きやった自分も
それから会って話がしたいだの何だのって1日何回も何回も連絡が来てたけど、全部無視した
心配した治やアランくんからも連絡がきたけど、本人に聞いてくださいとだけ返事した
そんなまま4月になって稲荷崎高校に入学した
ほんまやったら毎日一緒に通学したであろう通学路を1人で歩くだけで、胸が苦しくなる
「辛かったらかまへんけど、俺は歩にマネージャーやってほしい。俺らの代で全国制覇出来るかもしれん」
そうアラン君に言われて、マネージャーになった
稲荷崎は強豪で先輩にもマネージャーはいたし、そこまで侑と絡むことはなかった
ハイレベルな高校やけど、その中でもやっぱり侑は一際輝くセッターやった
アラン君筆頭に他にもすごい選手が沢山いたし、このメンバーやったらほんまに全国制覇するんちゃうかなって思った
そうこうしてる間にGWになり、両親から話があると言われた
「お父さん転勤で、宮城県に行くことになった。お母さんもついて来てくれるし、妹2人は中学生やから一緒に連れてく」
「歩がな、侑くんと付き合ってて同じ高校に通いたいって言うんやったら、あんただけ、離れのおばあちゃんちから通ってもええかなって思ってたんやけど…」
私らが別れたことは親も知ってる
なんせ三日三晩泣き続けたし
「行くわ、私も宮城」
そう決めて、部活もやめた
出発の日は教えず、逃げるように転校した
ラインはブロックして電話は無視
…せやのに年末会うたらどんな顔したらいいんやろ
でも他のみんなには会いたいし