第6章 ポルナレフ美容室【ポルナレフ】
ここはホテルの一室。
先ほどこの街に到着したばかりだが、運良く客室のあいているホテルが見つかり久しぶりにベッドで眠れることになったのだ。
2人部屋と3人部屋しかなかったため、花京院とおじいちゃんで一部屋、そして私と承太郎とポルナレフで一部屋を借りることになった。
3人部屋というより、2人部屋に無理やりベッドを足したような状態だけど、この際仕方がない。図体の小さい私が、おそらく今夜寝ることになる。
荷解きと、スタンド使いがいないか部屋の点検した後、夕食の時間までの小一時間は自由にしていい事になっていたので、承太郎はおじいちゃんと今後の打ち合わせに行ってしまった。
夕暮れでも明るい部屋にいられるのは久しぶりなので、私は読みかけの小説を取り出したのだが…。
「ポルナレフ。いつまで私の髪の毛触っているつもり?レディーに失礼よ。」
「おめー、そんなに髪が長いのに他の髪型はしねぇのか?」
ポルナレフは私の質問には答えず、私の髪をクルクルと指に絡ませながら、そう言った。
目の前にいるこの男も私と同じで暇なのだろう。
でも、こうも髪を触られていると読書に全く集中できない。
私は、少しため息を付きポルナレフの方へ体を向けた。
「はぁ。自分でヘアセットするのが苦手なのよ。ひとまとめにするほうが何かと楽だし。」
「艶もあるし、長さもある。こんなにキレイな髪してるのにもったいないとは思わねーのか?髪が泣いてるぜ?」
「おしゃれはTPOが大事なのよ。こんな旅じゃキレイにしてる方が場違いでしょう?」
私は小さくため息を付いた。
もともと、動きやすさ第一でTシャツにジーンズがほとんどなのに、髪の毛だけキレイにしてもしょうがないじゃないか。
「これからディナータイムなんだから、キレイにしたって変じゃないだろう?黄色いワンピース、この前の街で買ったんだろ?あれ着て、おめかしして、花京院のやつをあっと驚かせてやろうぜ。」
「なんでワンピース買ったこと、知ってるのよ!?」
怒りと焦りで早口になる私にはお構い無しで、ポルナレフは鏡台前の椅子をポンポンと叩いた。