水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第7章 初任務
間もなく隠の人たちが到着し、天元は怪我人の搬送や、子ども達の保護などの事後処理の指示をしていた。
あやは人目のつかない場所まで行くと、ふわっと木に上り、枝に腰かけた。さっき怪我をした腕の手当てをしようと隊服の片袖を抜こうとした所、天元が向こうから歩いてきた。
蝶屋敷の前ではゆっくりと姿を見ることはできなかったが、身の丈は6尺半ほどあるだろうか。天空も体躯が大きかったが、せいぜい6尺程で、天元はさらに一回り大きな印象だった。
天元は筋肉量も多いのだろう。隊服の袖から伸びた腕や、盛り上がっている胸板は服の上からでも鍛え上げられて逞しいのが分かる。
天元は足音こそ殆ど立てていないが、珍しく気配は消さずに堂々と歩いてきた。木の下に着くと腕を組んであやを見上げる。
表情は悪くない・・・いや、むしろ良い。
「おい、死にたがりの馬鹿隊士。お前の階級と名前を言え。」
「・・・・階級癸、紫天城あやです。」
「おーおー、癸のひよっこが柱の俺を庇おうとした勇気は褒めてやるが、犬死しようとするやつは鬼殺隊にはいらねぇよ。」
「柱はな、下の階級の奴の命も守らなきゃなんねぇんだ。目の前で俺を庇った癸を死なせたとあっちゃぁ・・・俺が恥かくぜ。」
天元はいつも他の隊士に絡むような口調であやにも声を掛けて来た。
「・・・・すみません。」
「分かればいい。一体倒したことは褒めてやるぜ。状況に応じた良い攻撃だった。」
「ありがとうございます。」
あやは、先日自分を殺そうとした天元が嘘のように、以前と同じ調子で話しかけてくる様子に警戒していた。
「おい、怪我したろ?降りてくるのと、俺がそこに行くのどっちがいい?」
「・・・失礼します。」
あやは木の枝からぱっと飛び降りて、音も無く天元の前に跪く。
「いいって、そういうの。・・もう里じゃねぇ。」
天元は優しく言うとあやの体をひょいっと抱え、近くの大きな石の上に座らせ、自分も横に座った。
あやは一瞬体が強張ったが、天元があやを殺す気ならどう抵抗しても生きて戻れないので、覚悟を決めた。