水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第4章 目標
私は、杏寿郎殿の話を聞きながら考えたことを言葉に出してみる。
「杏寿郎殿。私は杏寿郎殿の様な大きな目標を立てるにはまだ経験不足ですので現実的には考えられません。親の仇の鬼もどの鬼か記憶にありませんので、・・・一人でも多くの命と生活を守りたいと思います。」
杏寿郎の目標に比べると小さいかなと思いながら、杏寿郎を見ると、笑顔で私を見ていた。
「最初に出た目標が、自分の為ではなく、人の為に力を使いたいと思うのは立派な事だ。これからの任務は鬼の力が分からないことが多い。無理そうなら戦わずに上官を呼べばいい。しかし、そういう状況にならず、対峙しないといけない時もある。そしてそういう状況を乗り越えないと強くはなれない。あや、一緒に頑張ろう!」
「さ、ほら」と木刀を渡され、「ほとんど怪我も無いなんて君は凄いな!」と言いながら稽古が始まった。
杏寿郎殿が、階級が庚になるまでは命を落としやすいので心配だから屋敷にいて欲しい。庚位になると生家に戻って通いで稽古に来ると良い。と申し出てくれたのでありがたくお受けした。
実は煉獄家にいると、里の忍びが来ても屋敷に入って来ることができないのだ。何度か天空様や他の忍びの気配を外に感じたが、自分だけでなく、母屋の杏寿郎殿や槇寿郎殿も何かを感じるようで動き始める。するとすぐに気配は消える。正直、私は里の忍びや天空様に会いたくなかった。誰の顔色も窺わなくていい今の生活を邪魔されるのは嫌だった。
もう少しだけこの幸せが続くのは嬉しかった。
が、杏寿郎殿と一緒にいるとなれば、鬼を倒さずにのらりくらりと天元様だけを追えば良いという状況にはならなそうだった。でも、鬼を倒しながら強くなっていくという未来は不思議と嫌ではない。