水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第15章 無月
近くの大木に天元が声を掛けると、上からくるりくるりと枝を伝って3歳くらいの男の子が降りて来た。黒い髪に紫色の瞳の子。するすると天元の膝に座る。
「・・元兄、しっかり忍びの技を躾けているじゃないか。」
「こんなのはただの遊びだ。・・・空、この子、あやの子だぜ。」
「へぇ・・・おい坊主、名前は?」
「・・空。」
名前を聞いて、天空は嫌そうな顔をする。
「天元、・・・お前もあやも・・俺の事そんなに好きなのか?」
天空の苦虫を嚙み潰した様な顔を見て天元は笑う。
「・・何で嫌そうなんだよ。お前の字で付けてやったのに。・・・お前の事は考え方が合わねぇだけで、別に嫌いじゃねぇよ。あやだって同じだ。お前には感謝していたからこその、その名だ。」
「ふん。・・俺の子なら喜ぶんだがな。・・いや、でも、俺に似ているな。・・・連れて帰って忍びにしていいか?」
「いいわけねぇだろ。」
「・・・じゃあ、そいつもいつか誘拐しに来る。・・忍びの技を仕込んどけよ。」
そう言うとくるりと背中を向け、また塀の向こうへ行った。
その後、天空が天元の前に現れることは無かった。時々気配を感じたが、様子を伺うだけでもう傍へは来ない。
天元の方もいつか里へ行こうと思っていたが、結局行くことは無かった。
あやも天元も、新月の晩には天空の事を思い出した。
天空の方も満月の晩にはあやと天元を思い出す。
同じく天を仰いでおり、同じ月を見ているが、想いが重なることは無い。
生まれてくる世が違えばまた少し違ったのかもしれないが・・・今となっては分からない。
💎水光接天 完🌙