水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第15章 無月
四年後
春の天気のよい昼下がり
4カ月ほど前に鬼殺隊は無惨を倒し、本懐を遂げた。そして先日、晴れて解散となった。
天元と妻達は生き残った隊士達の世話や、産屋敷家の手伝いなどをしながら穏やかな毎日を送っていた。
この日、天元は留守番だったので縁側に腰かけてぼんやりと庭を眺めていた。
懐かしい気配を感じ、塀の向こうに声を掛ける。
「おぉ。久しいじゃねぇか。何しに来た?」
「暇そうだな、元兄。」
姿を現したのは天空。
「・・・あやは今、隊士の世話に行ってるぜ。」
「あぁ、知ってる。見て来た。あやは強くなったな。すぐに気配を察してくるから中々近づけなかった。顔も益々美しくなっていた。・・・逃した魚は大きい。」
ゆっくりと歩きながら、天元に近付く。
「・・天元・・・お前、いい面構えになったな。左手まで無くして。・・・へまでもしたか?」
天空は天元の眼帯をめくって瞳の傷を見ながら言う。
「いいや、逆だ。うまくいったからこの代償だけで済んだ。・・空、そういうお前も随分男前になってるじゃねぇか。」
天元も天空の顔を見上げながら言う。
天空も顔にも大きな傷跡がいくつも付いていた。
「・・男前は元々だ。」
ぷいと視線を逸らす。
「・・・で?今日は?」
「鬼の始祖を倒して元兄が暇をしていると聞いたからな。また勧誘だ。」
「さすがの情報網だな。でも、暇は間違いだ。」
「天元、親父はもう3年前に死んだぞ。里へ戻って諜報の技だけでも指導してくれ。暇だろう?子守じゃないか。」
「行かねぇよ。子守はたまたまだ。」
「あ、空。お前に良いもの見せてやるぜ。・・・ほら、降りてこい。」