第5章 同じ。
結局服をプレゼントされてしまった。
何か返さないと…とうんうん考えていると。
前から来ていた人とぶつかってしまった。
「あっ、すみませ…」
考え事をしていて、しっかり前を見てなかった。
申し訳ない、とぶつかってしまった人を見る。
「…ゆり」
「え…和也…?」
こんな所で、こんな時に会うなんて。
ぶつかった相手は、元彼の和也だった。
和也は、知らない女性と手を繋いでいて、その女性は不思議そうに私を見ていた。
「ねぇ和也、知り合い?」
なんて聞いている。
「え?あ、まぁ…」
なんて言葉を濁してる。
私も気まずくて、下を向いてしまう。
名前なんていわなきゃよかったのに、ばか。
その時、右手がぎゅっと握られ、右側にいた宏光が顔を覗き込んでくる。
はっと我に返り、宏光を見る。
少し顔が歪んでいるかもしれない、まさか会うなんて思わなかったから。
「なんでもないよ」
と咄嗟に笑顔を作るが、繋いだ手に少し力がこもってしまう。
多分、勘のいい宏光は気づいた。元彼だって。
和也は私を見て何か言いたそうな様子。
それを言わせまいと、宏光が私に言う。
「ゆりはぼーっとしてて危なっかしいなぁ。
まぁ、そういうところも可愛いけどね」
そう言って笑って、私の手を引っ張った。
「さ、行こう。」
「え、あ…」