第14章 感謝の日
「え、それで中彩さんと付き合うことになったんですか」
「ああ!」
「つい口を滑らせるなんて、なんか煉獄先生らしいですね。」
稽古の休み時間。俺は、斉藤少年と話した。斉藤少年には色々と世話になったから、報告も兼ねて中彩とあった事を掻い摘んで話したのだ。斉藤少年は俺の話を一通り聞いたあと、にやにやと笑みを浮かべる。
「それにしてもおでこにキス、手の甲にキス、煉獄先生意外と積極的な人だったんですね。その上、手を繋ごうって先生から言ったんですか。」
「そ、それは…」
そう、想いを伝えるためとは言え、中彩に気軽に触れすぎたような気がすると斉藤少年に話していた。中彩が不快に思っていたらと思うと申し訳なさがある。だが、あの時はどうしても中彩に触れたいという思いがあったのだ。だが、これから恋仲になるにあたって、この思いはこれからどう抑えたらいいのか。相変わらずインターネットの使い方に慣れなかったので、まずは斉藤少年の意見を聞こうと思ったのだ。
「でも、恋人同士になったんですから、スキンシップは割と普通のことですよ。第一、中彩さんは嫌がってなかったんでしょ?」
「む、」
「これからは、俺に聞くのもいいですけど、中彩さんの意見を聞いて、2人で関係を作っていくことが大切なんです。」
「む、」
斉藤少年は相変わらず感慨深い。剣の腕こそまだまだだが、彼の言葉にはいつも考えさせるものがある。俺は腕を組んで頷いた。
「うむ!それにしても斉藤少年はまるで恋について詳しいように思う!流石だな!」
「そんなことないですよ、人の相談だから冷静に話せるだけで。俺も彼女とのことになると感情的になって、喧嘩したりしますし。」
そう言って斉藤少年が浮かない顔をする。だが、直ぐに笑みを浮かべると俺に向き直り肩を叩いた。
「とりあえず、セックスする時はちゃんと避妊してくださいね、先生。」
「セッ………」
斉藤少年は冗談めかしくそう言うと、言葉に詰まる俺を置いて立ち上がり「さーて稽古やりましょ」と戻り始める。俺も立ち上がり、その後を追う。恋愛というものは厄介なものだ。今は名前の付いたその胸の違和感に息を吐く。
「中彩と2人で関係を作っていく」
俺は斉藤少年の言葉を繰り返し、稽古場のドアをくぐった。