第11章 ずる休みと第22話
人を食い殺せば取り返しがつかない!殺された人は戻らない!
真っ直ぐに煉獄さんはお館様という方に言う。私はこんなに真面目なシーンなのに、煉獄さんがこちらの世界と変わらず、煉獄さんが煉獄さんでいることに、私は笑ってしまった。当たり前のことなのに、なんだか嬉しかった。だが、目の前のアニメは緊張が走る場面。特に不死川という男は許せない。禰豆子をよく知らないくせにこんなにも傷つけるなんて、と炭治郎の思いが伝染する。私の感情が忙しく揺れる。
刀を突き立てられた禰豆子が不死川に挑発され、屋敷の座敷に飛ばされる。箱から出た禰豆子が鋭い視線を向けた。
そして22話が終わった。
隣の煉獄さんは懐かしむような表情をしている。まるで、この後どのような展開になるのかを知っているかのような表情だった。それもそうだ、煉獄さんはこの場にいたのだから。この場面をその目で見ていたのだから。
「あの、煉獄さん、」
「なんだ!」
隣にいる煉獄さんを見上げる。お館様の登場シーンからやや体勢が低かった煉獄さんが頭を上げて私を見下ろした。お館様というのは彼にとってやはり特別な存在なのだろう。
元の世界に、戻りたいですか。柱の皆と、会いたいですか。
私は煉獄さんに伝えようと喉まで出かかったその言葉を飲み込んだ。煉獄さんが帰りたいと言ったらどうするのだろう、会いたいと言ったらどうするのだろう。私は煉獄さんに何を言いたかったのか分からなくなってしまった。そして、
私は、煉獄さんとずっと一緒にいたい。
そう思う自分がいることに気づいた。
「煉獄さん、向こうの世界でも真っ直ぐだったんですね」
「中彩の言っている意味がわからないが、俺は俺だ!」
「そういうところです」
ふふ、と私が笑うと、釣られて煉獄さんが「はっはっ」と笑った。
私は昼食を食べ終え、空になった食器を重ねる。台所に運ぼうと席を立った時、煉獄さんが私の服の裾を引いた。
「中彩、今日は外が暖かい。部屋にひきこもってばかりでいては身体に良くない。軽く散歩をしないか。」
私はその言葉に頷く。そうだ、まだもう少し、煉獄さんがたとえいつか元の世界に戻ってしまっても、もう少しこの日常を一緒に過ごしていたい。
「はい!せっかくのずる休みですからね!」
だから、もう少しこのままで。私は笑う煉獄さんに微笑み返した。
