第11章 ずる休みと第22話
ぴぴぴ…
7:50。私の最初のアラームが鳴る。
私はそのアラームのスムーズ機能を利用し一旦止める。私の意識は白い部屋の中からすぐ再び薄暗い世界に溶け込む。力が入らない。ここ連日の残業の疲れが出たのかもしれない。もう少し寝よう。頭の端でそう思いながら意識を飛ばす。
8:00。先程停めたアラームが再び鳴りだす。
右手だけを別生物のように動かし、スマホを掴むとアラームのスムーズ機能を利用し再び止める。指が大体タップすべき場所はこの位置だと覚えている。眠い。起きれない。遠くでばたん、と煉獄さんが朝の走り込みから帰ってきたドアの音がする。
8:10。アラームが三度鳴りだす。
私はスマホの画面を恨めしく覗き込んでアラームを切った。だめだ、体が動かない。眠い。許してほしい。寝ぼけた頭でそう思う。私は誰に許しを乞うているのか分からなかったが、とにかくこの世の全ての存在にもう少し寝ることを許されたいと目を閉じた。
「中彩!朝だ!起きろ!」
煉獄さんが近寄ってきた。耳元で大きな声を出す。シャワーを浴びていたのか毛先が少し濡れている。私の首筋が濡れて少しヒヤリとする。
「〜〜〜!」
私は強制的に意識を現実に引き戻され、右耳を押さえる。痛い。うるさい。反射的に布団を被り煉獄さんから逃げた。
「中彩!朝だぞ!」
そんな私の布団を煉獄さんは勢いよく引っ張って私を朝日の元へ晒した。全く容赦がない。朝の煉獄さんこそ、鬼だと思う。
「いやだぁぁぁぁ会社に行きたくない〜〜〜」
私は布団を奪われながらも小さく丸まり駄々をこねた。半べそをかく。
「はっはっはっ!こうして中彩を起こすのにも慣れたものだ。」
煉獄さんは朝に強い。毎日6:00には起きて身支度をし、走り込みに出かける。シャワーを浴びて、そして会社に行く私をこうして叩き起す。毎朝のルーティンだ。
「私、今日はずる休みします。」
「む、仕事は大丈夫なのか?」
「ぐっ…」
煉獄さんの一言に私は狼狽える。デスクに乗った書類や溜まっていくメールを想像しては気分が悪くなった。良い訳ない、良い訳ないけど、私は悶々と考える。そう考えていたらふと気分が悪くなり、頭に冷や汗をかく。私はこのままではまずいと身体を起こし、慌てて転びそうになりながらもトイレに駆け込んだ。
「うぇぇぇぇ…」
そして吐いた。
