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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第6章 心のむずかしさ


「ちょ、ちょっとトイレ…」

横で見ていた中彩が早々に稽古場を出た後も、俺は稽古をする皆を見ていた。皆の打ち込みの姿勢、間合いを観察しながら指摘をする。何組かの打ち込みの様子を同時並行で観察する。皆、良い動きをする。俺は自分がいた前の世界を懐かしく思った。父上、千寿郎、御館様、竈門少年、皆どのように過ごしているだろうか。

「少し休憩だ!!!」

皆が肩で息をしている。俺は頷いた。きっと皆、強くなる。

ふと稽古場の外から風が吹き込んだ。やわらかな春の香りがする。懐かしさにかられ、俺は稽古場を出た。

すると、中彩が田中少年の姉、田中少女と話していた。それを見た時、初め、とても良い機会だと思った。というのも、今朝はおざなりになってしまったが、皆に中彩を紹介したいと思っていた。だが、田中少女は中彩をあまり好いていない様子だった。中彩は怯えた表情をしている。どうしたというのだ。

「ねぇ杏寿郎…この人は杏寿郎のなんなの…?」

俺は食住を共にしていると事実を告げた。それに対して中彩はやはり表情を凍らせている。

「杏寿郎は私のだもん!!」

俺と田中少女は今日初めて会うはずだ。また、田中少女と中彩も今日初めて会った間柄のはずだ。だが、中彩と田中少女、二人の間には何か俺が知らない繋がりがあった。この違和感は何だ?

「む…?」

田中少女が話していると、突然、中彩に耳を塞がれた。

中彩の顔が近づき、驚いた。彼女の香りがする。俺と同じ匂いだ。食住を共にしているのだから当然だ。だが、その時胸の辺りに違和感があった。少し息苦しい。数秒の間だったが、とても長く感じた。

その後中彩と離れて終始、田中少女は俺に好意的に接した。だが、田中少女の俺に向けられる思いを俺は理解が出来なかった。そもそも、俺は人を好くことについて、深く考えたことがない。否、興味もなかった。

その後、生徒に半ば連れ戻され、俺は稽古場に戻る。その後、田中少女はすぐに後を追ってきたが、中彩は「ちょっと出かけてくるね」と言ってどこかに行ってしまった。よく顔が見えなかった。俺は中彩の様子が引っかかった。だがまあよい。後で聞こう。

「休憩は終わりだ!」

俺は生徒と稽古を始めた。
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