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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第5章 おおさわぎ


世の中の鬼滅の刃人気がどれほどのものなのか、私は全くもって想定が甘かった。アニメに漫画、グッズ、一番くじどれをとってもお祭り騒ぎな鬼滅の刃、その登場するキャラクターともなれば知っている人は知っている、しかもその知っている人数と人気は他の作品に類を見ず相当なものだった。話を少し戻そう。

煉獄さんが働くことになった剣道の道場は、私の家からすぐ近くの少人数制の小さな道場だった。生徒は10名程度で年齢層も小学生から大学生までと幅広い。ご年配の男性が一人で趣味半ばに大切にしているアットホームな道場であった。

そんな道場主がぎっくり腰になってしまい、療養の間だけでも生徒に剣道を教えられる人を求めてと求人を出していたのを煉獄さんが見つけ、家からも近いし丁度いいと申し出て先方も願ったり叶ったりと即決だったらしい。

問題はその後だ。

道場に通う生徒たちは皆、鬼滅の刃を知っていた。

「俺の名前は煉獄杏寿郎!君達の師範に代わって指導にあたる!俺の指導は厳しいかもしれないが、君たちが強くなるよう、精一杯力を貸すつもりだ!よろしく頼む!」

なんて、煉獄さんそっくりの先生が来たものだから大騒ぎ。生徒たちの親、友達、親戚、色々な方面に「自分の通う剣道の道場に鬼滅の刃に出てくる煉獄さんにそっくりな先生がいる」と瞬く間に噂が広がったのだ。「物凄く指導が厳しくてついて行くのが大変」というおまけ付きで。

「やはり鍛錬に汗を流したあとの飯はうまいな!」

「煉獄さん…このTwitterでトレンド入りしてる、『♯煉獄さんそっくりさん』って煉獄さんの事じゃないですよね?」

「む!?ついったー?とはなんだ!わからん!」

「はぁぁぁぁぁぁ…」

「はっはっはっ!おかわり!」

煉獄さんが初めて道場に行ったその日、私のTwitterのタイムラインに流れてきたツイートの数々に驚いたものだ。見るところによると、一緒に写真を撮って欲しいと言った生徒の言葉に喜んで一緒に写ったものだから、その画像があわせて拡散され、その完成度の高い煉獄 杏寿郎に日本中が沸いているわけだ。ただ、帽子とメガネをつけていることもあって、ツイートの内容を見るに、誰も煉獄さんを本物の煉獄さんだとは思わず、あくまでそっくりさんとして扱っている。本人が「煉獄杏寿郎」と名乗っているのも、ノリがいいからということになっているらしい。
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