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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第4章 日曜日の夜の過ごし方


煉獄さんの真っ直ぐな言葉につい了承してしまったが、良かったのだろうか。私は髪を乾かしながら煉獄さんに半ば押し負けてしまった自分にため息をついた。

「でも、心配しすぎも良くないよね」

ドライヤーの音に紛れて私はつぶやく。

そうだ。煉獄さんがそうしたいと言ったことを私が無下にしてしまっては煉獄さんもきっと息苦しいだろう。彼がこの世界で不自由なく暮らして行けるように、彼が危険な目に遭わないように、そして、彼が元いた世界に戻れるように、力を貸すのが私の役割だろう。それは決して相手の自由を奪ったり、押さえつけたりすることではない。それでも、このタイミングで彼の意見を尊重したことが正しかったのか、私はまだ自信が持てずにいた。

ドライヤーを終えて布団に向かうと、既に煉獄さんは布団に横になって寝息を立てていた。その寝相があまりにもお行儀がよくて私は笑ってしまう。

煉獄さんはいつだってぶれない自分を持っている。寝ている姿からわかるものでは無いけど、まだ出会って日が浅くて根拠はないけれど、私はそう思う。彼なら、たとえ大変なことがあっても乗り越えていける。守られているような人間ではない、きっと誰かを守ることの方が多い人だったのでは無いかと思う。でも、だからこそ、私は煉獄さんを1人にしたくなかった。彼はそんな私を置いて先に先に行ってしまうけど。

煉獄さんの寝顔を横から覗き込む。閉じられた瞼に綺麗に生え揃ったまつ毛の長さに驚く。瞳の大きさと比例してまつ毛も長くなるものなのであろうか。普段大きな瞳に対して、あまり主張しないまつ毛だが、その美しさについ見入ってしまう。もっとよく見たいと顔を近づけて惚けていると、突然パチッと目を開いた煉獄さんと目が合った。

「む…?」

「わっ…///ご、ごめんなさい…!!!」

「…まだ起きていたのだな。眠れないのか?」

私を見つめながら少し柔らかな声音で煉獄さんは囁く。一瞬にしてぱちっと目が開いたので起きていたのかとも思ったけど、どうやら眠っていたところを起こしてしまったようだ。声がとろんとしている。

「ご、ごめんなさい、今すぐ電気消しますね!」

私は部屋の明かりを落とす。煉獄さんは何も言わずに暗い部屋に溶けて表情が見えなくなった。私も煉獄さんの隣の布団にも潜る。どきどきと胸が高鳴る。ずっと見つめてしまって、変態じゃないか私どうしたんだ。
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