第3章 おでかけにいこう!
「よもやよもや…こんなに人が多いとは」
ニットの帽子にマスク、伊達メガネ
芸能人の変装ですか?というような格好だが、現在新型のウイルスが流行している令和ではマスク自体があまり珍しいものでないので、煉獄さんの変装もそこまで浮かなかった。
やってきたのは湯島駅から徒歩10数分の大型のユニクロ。
休みということもあって人通りは多く、伊達メガネの奥で煉獄さんは目を丸くしていた。
「このような場に鬼が出たら大変だ」
「煉獄さん、この世界には多分鬼いないです」
「平和な世が訪れたのだな」
「平和な世…でもないですが…」
入口で消毒をして、検温をする。その間も煉獄さんは目を丸くしていて、非接触型体温計にも「これはなんだ?」と私の肩を叩く。煉獄さんは少し体温が高めだったけど、とりあえず引っかからずに済んだ。
「上に行きましょう」
エスカレーターにも珍しそうにするものだから、一緒にいて何だかおかしくなってしまう。煉獄さんは堂々と歩きつつも、「どちらに行ったら良いのだ?」と都度私に振り向く。私は煉獄さんの手首を持って、軽く引くように彼の前を歩いた。
「大体Lサイズですかね…」
何着かもって煉獄さんを試着室に押し込む。数分後、カーテンを開けたら、ユニクロのシンプルな服装もとても似合っていて、見惚れてしまった。
「これと、これとこれと…」
着るのが楽な服を中心に煉獄さんが似合いそうなアイテムをセレクトする。
「煉獄さん、この当たりは好みが別れるので煉獄さんが好きなものを買ってください…」
男性用下着コーナーで指を指すと煉獄さんは「ふむ…」と顎に手を当て一考し、「よくわからん!」と言った。
トランクスとボクサーパンツと、一通り買ってパンパンになったカゴを会計へ持っていく。私は財布からカードを出して支払った。痛い出費だ。だが仕方ない。
会計が終わった私が煉獄さんの所へ戻ると、煉獄さんは私が持ってきた紙袋をひょいと代わりに持ってくれた。
「ありがとうございます…」
「気にするな!俺のために付き合わせてすまない!他に何が必要なのだ?」
「歯ブラシと、髭剃りと、あと男性は何が必要なんでしょう…?食料品も買って帰りますかね」
「そうだな!!!」
その後、薬局や食料品売り場や日用雑貨をめぐり、とりあえず生活に必要なものを揃えた。
