第2章 きっとこれは恋じゃない
「大丈夫だよ蜜璃ちゃん」
「ぇえっ、でも…」
「ほんとに大丈夫。もしお父さんが生きてたらね、私が辛いって思いながらあの学校に通い続けるのは、良い事だって言わないと思うんだ。だからね、学校を変わる事にはなっちゃったけど、許してくれると思う。だってお父さん、優しいから」
今にも泣き出しそうな蜜璃ちゃんに、大丈夫だから!と、笑って見せた。
「それでもっ、それでもね!うぅっ…うわぁあん!柚葉ちゃんごめんねぇー!」
泣き出しそう…を通り越して、もう泣き出してしまった蜜璃ちゃんは、私を思いっきりぎゅうっと抱きしめた。
「ごめんねぇ柚葉ちゃん、お父さんとのこと思い出させて!それにねっ、学校での事私何にも知らなくて…、辛かったわよね。それなのに、私さっきあんな事言っちゃって…、無神経よね!ほんとにごめんなさい!ぇえーん!」
もう手が付けられないほど大号泣の蜜璃ちゃんを、伊黒さんはやれやれといった様子で、それでも優しい眼差しで、蜜璃ちゃんの頭をぽんぽんと撫でた。
「知らなかったのは当たり前だよ。だって私言わなかったんだもん。心配かけたくなかったの。だからほんとに気にしなくていいんだよ」
そう言って、私も蜜璃ちゃんの赤くなったおでこのたんこぶをよしよしと撫でた。
…後で冷やしてあげよう。
「ぐすっ…、二人ともごめんなさい。私みっともないわね、こんなに泣いて…」
「まさか、俺の蜜璃がみっともないわけないだろう。ほら、こっちを向いて。俺が涙を拭いてやるから」
うん!と素直に返事をして、伊黒さんの方へ向き直る蜜璃ちゃん。
伊黒さんは、ぽろぽろと涙を流す蜜璃ちゃんの涙をハンカチでそっと優しく拭いてあげた。
…なんだか見てはいけないものを見ている気がする。
なんとも言えない気持ちになって、ちょっとドキドキした。