第1章 Episode:01
(早く、早く)
前回行った日からきっちり一週間経った今日、私はいつものようにお店へと元に向かっていた。
いつもは重い足が、今日は軽い。走り出しそうになったけど、後が辛いので早歩きで止めておく。
毎回のことながら、長かった今日までの日々。今日は自分へのご褒美の日だ。
他のお客さんも居ればいいな、二人きりだと緊張して顔上げれないし。
逸る気持ちと弾む息がシンクロしてるみたいだ。
あと少し。
(うそ……)
呼吸を整える間もないまま店の中を覗くけれど、
シャッターが閉まっていて、臨時休業と印字された紙が貼ってあった。
予想外の出来事に、拍子抜けしてる自分が居る。
休みなら仕方ない…
「また、くるか……」
「ほんと残念よね」
思わず口に出てしまった声に被って、後ろから聞こえた声、に、反射的に身体が動いて、しまった。
何の心の準備をしないで振り向くと、何とそこには。
「今日発売の限定のコスメ。ここしか取り扱ってないってのについてないわ」
まず最初に視界に入った色で、目の前に居るのが誰なのか認識した。
深いオレンジ色。サラサラとなびく細い髪の毛。
茶色の綺麗な瞳が私をじっと見つめている。
何だか妙に現実感がなくて、一瞬白昼夢じゃないかと思った。
もしくは、会いたいって気持ちが生み出した、幻とか…でも、そんなんじゃないってことはちゃんと分かってる。
ずっと、ずっと、見つめてきたんだから。
目の前に居るこの人は、確実に、紛れもなく、野薔薇ちゃん、だ。
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