第6章 Episode:06*
「なーに根暗ちゃん。真面目が取り柄だけのアンタがこんな時間まで起きてていいの?」
綾瀬の軽口に、ウケる、と他の二人が笑う。
笑いたければいくらでも笑えばいい。
けど。
「……、し、……て…」
「あぁ?」
「ペンダント……返し、て。それは、私の…私の大切な人から貰った、一番大事な、宝物なの!」
けど、もう。
絶対に、逃げない。
「!?っ、ちょ……っ」
綾瀬を目がけて走り出して、肩を掴む。
すぐに引き剥がされて地面に叩きつけられるものの、すぐに立ち上がってもう一度綾瀬に掴みかかる。
「いい加減にしろよ!キモいんだよ!」
今度は他の二人も加わり、思いっきり突き飛ばされて、殴られた。
それでも私は立ち上がる。
何度も、何度も。
痛みで気を失いそうになっても、身体がバラバラに千切れてしまいそうになっても、歯を食い縛って、全力で手を伸ばす。
本当は恐くて恐くて堪らない。足だってみっともなく震えてて、はっきりしない視界は白くぼやけてる。
――――でも。
(……野薔薇ちゃん)
野薔薇ちゃん、野薔薇ちゃん。
あなたが創ってくれた世界は―…いや。
あなたが笑う世界は、いつだってやさしかった。温かかった。
いつだって、輝いてた。
だから、今度は私が。
私が、あなたの世界を守る。
一度は手放してしまったけど……もう放さない。
あなたに、笑っていてほしいから。
*