第5章 Episode:05
一方。
一人残された野薔薇はというと、の腕を掴んだ体勢のまま、その場に固まってしまっていた。
「あれ?釘崎?」
任務帰りの虎杖の目に映ったのは、駅の中で立ったままピクリともしない野薔薇の姿。
どうしたものかと野薔薇の横まで行って、顔を覗き込みながら問いかける。
「釘崎?どしたの?」
「……、い………」
「え?」
「今の、やばい……」
意味不明な野薔薇の発言に、はぁ?と虎杖が眉を寄せる。
が、野薔薇は終始心ここに在らずといった様子で、が走り去っていった方向をじっと見つめていて。
瞬きすらしていない。
「…私、のこと……」
―好き、かも。
ぽつりと落とされた爆弾のような呟きは、しっかりと虎杖の耳にも届いて。
何がどうなってそうなったのか全く分からない虎杖だったが、彼の度胆を抜くには充分すぎる威力を持った爆弾だった。
*