第1章 Episode:01
私が野薔薇ちゃんと出会った(というか一方的に知った)のは、二ヵ月ぐらい前のこと。
残念ながら、絡まれてたのを助けてもらったとか、街中でぶつかったとか、そんな運命的な出会い方をした訳ではない。
ただ、私が偶然見かけただけ。
変わりない日常が終わり、精も根も尽き果てた私は、その日もフラフラとした足取りで下校していた。
けど、いつもと唯一違ったのは、帰り道。
どうせ家に帰ったって一人だしすることないし、と思って、遠回りだって分かってたけど、何となく違う道を通ってみた。
それであの店を見つけて、普段なら俯いて通り過ぎてただろう。
でも、偶然店頭にいた野薔薇ちゃんを目にした途端、自然に足が止まって。
遠目に見ただけなのに、綺麗な子だなって思った。
自分がこんなだから、余計にそう感じてしまったんだと思う。
適度に筋肉がついてスラリとした身体も、整った容姿も、サラサラとした綺麗な髪の毛も、全部私とは正反対で、私にはないものだったから。
もっと近くで見たくて、こっそりと店に近付いた。
やっぱり、綺麗だと思った。こんな綺麗な人、今まで見たことないって思った。
でも、人と接することが苦手な私は、彼女と目が合う前にその場から逃げ出していた。
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