第3章 Episode:03
「?」
「………」
ペンダントを手の平に乗せたまま何も言わない私に、本当は欲しくなかった?と心配そうに問う野薔薇ちゃん。
あ、と気付いて、慌ててかぶりを振った。
「っ、ちがくて、あの……野薔薇ちゃんがいるみたいなだなって…」
「私?」
「このペンダントを見た時に、野薔薇ちゃんみたいだなって思ったの…ほら、オレンジ色でしょ?野薔薇ちゃんの髪の色と一緒だなって」
だから…と言葉を次ごうとしたものの、野薔薇ちゃんのぽかんとした表情が目に入って、ハッと我に返った。
本心とはいえ、私はとんでもなく恥ずかしいことを口にしてしまったらしい。
身体中の体温が瞬時に上がったような気がした。
「その、えと、だから…何を言いたいのかというと、その……」
「……」
「〜〜…っ、要、するに!死んじゃいそうなくらい!すっっっごく嬉しいってこと!野薔薇ちゃんからプレゼントされて!」
ぎゅっとペンダントを両手で握り締める。
とにかく、本当に嬉しいって気持ちは野薔薇ちゃんに伝わってほしくて。弁明も兼ねて、必死に口を動かした。
「可愛いすぎて私には似合わないと思うけど、毎日つけるね!学校にもつけてく!お守りみたいに、野薔薇ちゃんと一緒にいると思って、だから、あの、」
――――大切に、するね。
意気込んで話し始めたのはいいものの、最後の方はひどく小さな呟きのようになってしまって。
でも野薔薇ちゃんは、そんな私の言葉を一つも聞き逃さないでいてくれた。
「…うん」
やさしい声。
いつだって野薔薇ちゃんの声は、ガチガチになってる私の心と身体の力を抜いてくれる。
「うん……ありがとう、。あんたの大きい声、初めて聞いたわ」
そう言った野薔薇ちゃんの顔には、さっき見た、苦笑いにも似た笑みが浮かんでいて。
その笑みが照れ笑いだと判明するのは、それからしばらくしてからのことだった。
*