第3章 Episode:03
歩いていると突然何かを思い出したように、野薔薇ちゃんが足を止めた。
「あ…私、買い忘れてたのあったわ。、悪いけどちょっと待っててくれる?」
「私も行こうか?」
「いや、いい。ここで待ってて」
すぐ戻るから、と野薔薇ちゃんが元来た道を戻って行く。
言われた通り、そばにあった自動販売機の横で待っていると、しばらくして野薔薇ちゃんが帰って来た。
「ごめんごめん!待たせて」
「ううん。全然いいよ」
「お詫びにコレ」
に。と渡してくれた。小さな箱。
中身を開けてみると、先ほど首にかけたペンダントだった。
「いつも買い物に付き合ってくれる。お礼も兼ねて」
「!」
そう言ってくれるけど、そんな簡単に受け取れるはずもなく、私は盛大に取り乱してしまった。
「そ、んな受け取れないよ!それかお金払わせて!お礼って、何にもしてないし、するなら私の方だよ!」
「いいから受け取るの!こうでもしないとアンタ買わないでしょ!?すっごい似合ってたのにもったいない!」
それとも、私からのプレゼントは嫌わけ?と、野薔薇ちゃんの綺麗な瞳にじっと見つめられて。
ずるい、と思った。
嫌だなんて、そんなあるわけない。そんな風に見つめられたら、もう拒むことなんて出来ない。
観念してこくりと頷くと、それでいいの、と野薔薇ちゃんの顔が安心したように和らぐ。
瞬間、全身に電流が駆け巡ったような気がした。
「あ、ありがとう。野薔薇ちゃん」
「いいえ、こちらこそ」
ビリビリと痺れたような指先で、ペンダントを取る。
チェーンの冷たさが、何だか心地好かった。
*