第3章 Episode:03
「私には、どうせ似合わないから」
だから、いいの。
そこまで言って言葉を切る。
そう、似合わないんだ。そんなのはつけてみなくても分かること。
へらりと顔が緩んだ気がした。何でこういう時にばかり笑えるんだろう。
「ふーん…」
ずっと足元を見ていたから野薔薇ちゃんがどんな表情をしているかは分からなかったけど、野薔薇ちゃんはそれ以上何も言わずに、ペンダントを売り場に戻した。
と思った、瞬間。
シャラン、と首からペンダントをかけられた。
「!」
「似合ってんじゃん」
野薔薇ちゃんの声に、やっと胸元から意識が離れる。
買ったら?と問われて、慌ててかぶりを振った。
「う、ううん、いい。つけてくとこないし…」
「そう?それならいいけど……」
野薔薇ちゃんはまだ不思議そうな顔してたけど、ペンダントを元に戻しながらじゃあ行こうか、と言ってお店を出る。
野薔薇ちゃんと二人肩を並べて歩くものの、私の頭の中は野薔薇ちゃんに首にかけられたペンダントでいっぱい。
最初は何となく見てただけだったのに、野薔薇ちゃんから
ー似合ってんじゃん
そう言われただけで、なんでだろう特別な物のように思えて…咄嗟に断っちゃったけど、やっぱり買えばよかったかな、と後悔をしてる自分がいた。
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