第3章 Episode:03
待ち遠しく思えば思う程、時間は長く遅く流れるもの。けど、確実に過ぎてもいくもので。
帰りのSHRが終わるのと同時に、荷物をまとめて教室を後にする。
気持ちばかりが急いて、足がついていかない。
電車に乗って最寄りの駅に着く頃には、私の息はすっかり上がりきっていた。
(ふー……)
一つ、深呼吸。
息を整えたところで、駅の改札口を出ると。
(あれ……?)
野薔薇ちゃんの隣にもうひとり。
「おー。こっちこっち」
パーカーに学生服を着た男の子が、にこにこ笑いながら私に手を振っている。
淡いピンクに染められた髪の毛に、両目の下にある傷が印象的な。
野薔薇ちゃんの友達の虎杖くんだった。
「俺、釘崎と同じクラスの虎杖悠二。よろしくな」
「あ…、です」
ごめんなさい。虎杖くん、はじめましてじゃないの私、名前知ってるの…。
罪悪感を感じながらたどたどしく自己紹介をする私に、虎杖くんはニコリと笑顔を返してくれた。
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