第2章 Episode:02
「……ねぇ、」
二人、肩を並べて。
夜風に吹かれながら歩いていると、それこそ風の音みたいな野薔薇ちゃんの静かな声が耳に響いた。
心地良い音。自然に耳に入ってくる、ような。
でも、万が一でも聞き逃したくなくて、じっと耳を澄ます。
「人って、さ。自分でも知らない内に、どんどんすり減っていくもんなんだよ。大丈夫って思ってても、確実に。空っぽにになってからじゃ、遅いのよ」
「…………」
だから、と野薔薇ちゃんが言葉を続ける。
「なんて言ったらいいか分かんないけど……取りあえず、また一緒に遊び行こう。LINEだっていつでも送っていいんだからね」
「っ……!」
「待ってるから」
言って、ふっと微笑みを浮かべてくれた野薔薇ちゃんに、どうしてだろう。
ズクンと、胸の辺りに何かを突き立てられたような気がして。
痛む訳じゃない。
でも、刺、みたいな、何か鋭いもの、が、心にめり込んでるみたいだ。
ズクン、ズクン、ズクン。
熱い。そう、熱いんだよ。
少し前の私なら、そんなことを言われたら嬉しくて嬉しくて仕方なかったはずなのに。
今日野薔薇ちゃんと会ってからずっと鳴り止まなかった変な鼓動とも連動して、今はただ熱い。
胸が?心臓が?……心、が?
胸の辺りにじんわりと籠もった熱。
気のせいだと必死で自分に言い聞かせながら、ありがとう、と絞り出すようにして呟いた。
*