第1章 Episode:01
(……帰ろう)
マニキュアを元あった場所に戻してその場を立ち去ろうとするけれど、長い前髪の間から他の品物も目に入って。
可愛いデザインの、様々な形をしたアクセサリー。
野薔薇ちゃんのことを抜きにしても、こういうのが似合う人間だったらなとつくづく思う。
外見的にも内面的にも、ないものねだりだ。
(はぁ……)
今度こそ帰ろうと、勝手に沈んだ心を引きずって重い踵を返す。
毎回こんな気持ちになって帰ってるような気がするけど、いつも、何か淡いピンク色をしたもので胸が満たされているのが分かるから。
再来週も、また懲りずにここに来てしまうんだろうな。
いわゆる、充電みたいなもの。
「……………」
明日からも頑張ろう、と自分を励まして店を出たわたしの背中に向けられていた無言の視線に、その時は気付かなかった。
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