第2章 Episode:02
昔からそうだ。
昔から、私にとってこの人は恐怖の対象でしかない。
『相変わらずはっきりしない子ね……まぁいいわ。知ってるでしょ?あの人、夜自分が居る時に私があなたに電話するとうるさいのよ。すごく嫌がるの。だから、あの人が仕事に行ってて、あなたも学校が終わってる今の時間帯にしか、電話出来ないの。言ってる意味、分かるわよね』
「うん…ごめんなさい」
それならいいわ、と何の抑揚もない声でお母さんが言う。
分かってる、分かってるよ。
要するに、電話をかけた時は速やかに出ろってことでしょ?
それだけの、為に…それだけ言いたいが為に、そんなつらつらと端から端まで並べ立てなくても。
思い、知らせなくても。
私が、あなたにとってどれだけ厄介な存在であるかということを。
結局、お母さんは私の家賃のことだとか今月の生活費の振り込みのことだとか、事務的なことを実に事務的な口調で伝えて、電話を切った。
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