第2章 Episode:02
屋外の体育倉庫には窓がない。
だから、扉を閉めて鍵をかけられてしまうと、本当に真っ暗で、グラウンドの方に目をやると、ウオーミングアップをしている陸上部の姿が見えた。
ああ、やっぱり放課後になっちゃってたんだ。
体育は五限目だったから、約一時間はあのじめじめとした埃っぽい空間に閉じ込められてたことになる。
六限目、出れなかったな。
誰も私が居なかったことなんか気にしてないだろうけど、先生にだって、クラスの誰かが保健室に行ってますとか嘘を吐けば済むことなんだから。
(……ぐらぐら、する)
揺れている地面を歩いてるみたいに足元が覚束なくて、口も半開きのまま閉まらない。
耳には、閉められた扉越しに聞こえた楽しそうな嘲笑の声がまだ響いてる。
知ってる。聞いたことが、ある。
やったのは、いつも私に絡んでくるあの集団に間違いない。
でも、誰が、なんて関係ないような気がした。
あいつらは何も知らない誰かがあの鍵を開けるだろうことまで計算していただろうし、私も大声を出して助けを呼ぼうとはしなかった。
あがこうと、しなかった。
そんなことをしても無駄だって分かりきっていたから、身体を縮めて、じっとして、いずれは用事がある誰かがやって来るだろうと。
私もあいつらも、あの体育倉庫みたいに陰湿なことには変わりない。
*