第2章 Episode:02
『』
そう私を呼ぶ野薔薇ちゃんの声を思い出す度に、何とも幸せな気持ちになった。
学校でも家でも相変わらず一人だったけど、それだけで…それだけで、あの時感じた浸れる位の幸福感が甦る。
周りを取り巻いているあらゆるものに、どんなに踏み躙られようとも。
どんなに、打ちのめされようとも―。
ガチャン。
重い金属音がやけに大きく響いた。
視界が真っ暗になる前聞いた覚えがある音に、抱えた膝に埋めていた顔をゆっくりと上げる。
中央から開いていく扉と平行して徐々に入ってくる光が、暗闇に慣れた両目にしみるように痛んだ。
「きゃ!えっ、ちょっと、こんなとこで何してんの!?」
「……捜し物です」
視界がぼやけていて扉を開けてくれたのが誰かは判別出来なかったけど、ジャージの色で二年生の先輩だということは分かった。
部活に使う用具を取りに来たのだろうか。少なくとも私みたいに、外体育の片付けを押しつけられた人ではないだろうな。
別にどちらでもいい。彼女は後ろから蹴飛ばされて閉じ込められたりしないんだから。
とにかく、一刻も早くこんな所から抜け出したくて、適当に答えて、今の今まで閉じ込められていた体育倉庫から抜け出す。
訝しげな視線を背中に感じたけど、そんなことを気にかけてられるような精神状態じゃなかった。
*