第1章 Episode:01
予想外の接触から、一ヵ月が経った。
けど、私はあの日のショックから今だに立ち直れないでいる。
寝ても覚めても頭の中に浮かぶのは、全部野薔薇ちゃんのこと。
野薔薇ちゃんの声、野薔薇ちゃんの瞳、野薔薇ちゃんの表情。
あの日は確かに全て私に向けられていて。
思い出すたびに、心臓を素手で掻きむしりたくなる。
あの綺麗な瞳に、無様で情けない私の姿が映ってた。
知られてた。気付かれて、た。
ずっと、ずっと。
「はぁ……」
さっき持ったばかりの箸を、もう一度置く。
駄目だ。ただでさえ喉を通らない食事が、全く胃に入っていかない。
目の前には、インスタントの春雨スープ。
ちゃんと食べなきゃと思っても、身体が台所に向かわないものだからこれにしたのに、春雨すら身体が受け付けない。
駄目だな、本当に。
これだからいつまで経ってもガリガリなんだよ。
食べることを一旦諦めて、ごろんとその場に寝転んだ。
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