第15章 かぐや姫と姫さんのお茶会
「こんにちはーっ」
「空臣?」
「なんでここに?」
「あっ政宗さん家康さん久しぶり!」
ひょこっと顔を出したのは、継国陽臣の息子である空臣。
屈託のない笑顔は、まだ元服しても間もない少年らしさが際立つ。
「華音ならさっきお前達んとこ行かなかったか?」
「うん来たよ。今母上を診てもらってる。俺は華音さんと父上から伝言預かって来たの」
「伝言?」
「あの人伝言なんか頼むの…?」
陽臣とは昔付き合いがあった家康は、陽臣の性格をある程度知っていた。
家康や義元がかつて陽臣に向けていたのは、人間離れした美しさと強さへの偶像崇拝に近い。
勝手に憧れて、陽臣もなんの気まぐれなのか二人に構っていた。
何故自分達に良くしてくれていたのかは分からないが、他人との距離が遠い印象があった。
「俺もそう思ったよ。まず華音さんの方は、“今日は泊まっていきます”だって」
「…まあ無断で朝帰りするよりましか」
「へえ、あの人朝帰りしたんだ。へえ」
「空臣、なんだその目は」
「いや別に」
家康の目には、一瞬空臣の目が「あんたは朝帰りしても誰も何も言われないのにあの人が朝帰りしたら言うんだ」と言っているように見えた。
目で語るところは陽臣に似ている。
顔の良さと相乗効果で余計に威力がある。
やはり彼らは親子だ。
「父上からの伝言は家康さんと光秀さんにだったからまた今度ね。急ぎのじゃないから」
「…そう」
先延ばしされると不安が大きくなる。
陽臣以外の誰かの伝言なら、気になりはすれど不安にはならない。
しかし相手はよりによって陽臣だ。
絶対ろくな伝言ではないと分かってはいるが、待つしかない。