第15章 かぐや姫と姫さんのお茶会
「___いたぁ!華音!!」
「秀吉、今は華音に近づかないでやってくれ」
信長と秀吉との現場に出くわしてしまったのが余程ショックだったのだろう。
華音は背を向けて体育座りをして、家康に優しく背中をさすられていた。
「秀吉さんあんた、華音になんてもの見せてたんですか」
「違う、全部誤解だ」
「……だって、秀吉どのが、信長様に、下克上」
「下克上の使い方をこの上ないほどに間違っている」
「私は医者として失格です。例え患者に心の臓が二個ついていようが不老不死だろうが驚いてはいけないと言われていたのに」
「そこは驚けよ」
秀吉は一から丁寧に先程の状況の説明をする。
なんでも、三成が茶を淹れた時に足元にいた猫に気をとられてぶちまけてしまい、信長に向かって溢れた茶を秀吉が庇ってああなったとのこと。
思い返してみれば、あの時華音の視界の端に三成と猫がいた。
「つまり、華音の完全な誤解ということか」
「………」
「華音、頼むからそんな道端の石ころでも見るような目をやめろ」
正直、信長とのあれこれが誤解だったとかはもう華音にとってどうでもいい。
華音の願いは、頼むからそろそろ身を固めてくれということだ。
何度も言うが、華音にとって好いてもいない男の女性関係はかなりどうでもいい。
ただ、そのとばっちりがこちらに来るのだけは勘弁してほしいのだ。
その証拠に華音は余程大事な用が無い限り、秀吉と政宗の御殿には立ち寄らない。
「というか信長様に御用があったんじゃないか」
「外出の許可をいただきに」
「?なんでわざわざ信長様に?今までは俺達の中で適当に近くにいる奴に言ってただろ」
「相手が相手でしたので」
そう言って華音は袂から文を出した。
真ん中にいる政宗に渡し、横から秀吉と家康が覗く。
“許可出したから一度うちに来い。茶菓子は出す。
追伸 護衛とかいらないからな。
継国陽臣”
とても簡潔にまとめられた文だった。
達筆なのがとても惜しい。